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女性泌尿器科百科(9)骨盤臓器脱の手術療法2 メッシュを用いた手術

メッシュを用いた骨盤臓器脱手術についてお話ししましょう。
私と昭和大横浜市北部病院の島田教授が2005年に日本に紹介したtension-free vaginal mesh (TVM)手術は瞬く間に日本中に広まり2009年末までに国内で10000例を超える(メーカー調べ)手術が行われたと考えられます。
腟式メッシュ手術の展開
 腟式メッシュ手術は1992年ころから欧米で行われるようになりました。しかしながら、その実態は多くの術者が自分なりの手術法を考案して行ってはいますが、経験に基づく自分だけの手術法という程度にとどまり、広く行われる方法とはなりませんでした。その理由の一つはメッシュという体にとって異物である材料を体内に入れることで、手術の後で腟からメッシュが露出してくることが多かったこと(30%前後)です。メッシュの素材や織り方が今のメッシュと異なっていたことやメッシュを入れる場所などがメッシュ露出の頻度が高かった原因ではなかったと思われます。
 2000年にフランスの9人の婦人科医のグループ(TVMグループ)がメッシュを用いた新しい手術を考案しました。彼らは、初期には子宮を摘出した後にメッシュを用いて骨盤底修復を行っていたが、後に子宮を摘出せず、腟壁も切除しないとメッシュの露出が5%以下になることを報告しました。後にこのメッシュ手術はプロリフトというキットとして欧米で広く行われるようになりました。

TVM手術の考え方 
TVM手術がどのような方法で骨盤臓器脱を治そうとするのか、基本的な考え方を述べるので少しずつ理解を深めてください。
(1) TVM手術は骨盤臓器脱を面で修復
 TVM手術に用いるメッシュの写真を見ていただきたい。
9x7cm程度の台形に似た中心部(コアと呼んでいます)の面の四方に4本の細長い脚(アームと呼んでいます)がついたメッシュは前壁下垂(膀胱瘤や合併した子宮下垂)を治療するのに用います。
 メッシュのコアが、痛んだ筋肉の膜(恥骨頸部筋膜)の代わりに腟の前壁の骨組みになります。メッシュのアームを骨盤の中のしっかりした組織(骨盤筋膜腱弓;ATFPなど)を通すことで4点支持のハンモックを形成する役目を果たします。

ハンモックの面をきれいに張ることでどこに損傷があっても治すことができるのです。

(2)メッシュは鉄筋コンクリートの鉄筋である:私は患者さんに「メッシュは建物を立てる際の鉄筋である」と説明します。骨組みとなるメッシュには多くの穴が開いていて、コンクリートとして体の組織がすぐにその穴から侵入してきて一枚の生体の膜が作られるのです。

Posted by 2011/05/12

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