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女性泌尿器科百科(12)さようなら尿もれ、尿失禁−1−

なたの尿もれのタイプは? 尿もれは専門的には尿失禁と言います。一口に尿失禁と言っても、その原因によりいくつかのタイプに分類されます。

女性に多い尿失禁は腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁とその混合型です。

腹圧性尿失禁

例1 Aさん、43歳女性の場合
2回妊娠、2回とも普通分娩、第2子出産後から、せき、くしゃみをしたときや縄跳びをした時などにもれるようになりました。40歳を過ぎた頃から体重が増え始め、それにつれて尿もれが悪化し、1時間ほど歩行すると漏れるようになったためパッドが手放せなくなりました。産婦人科を受診、薬を処方され骨盤体操のパンフレットを手渡されましたが、薬は全く効果がなく、骨盤体操は要点がつかめないため続けることができなかった。その後は治療をあきらめていましたがテレビと新聞で尿失禁が簡単な手術で治ることを知り私の外来に来られました。

腹圧性尿失禁の症状
せき、くしゃみ、重いものを持ったときなど、おなかに圧がかかったときに漏れるタイプを腹圧性尿失禁と言います。ひどくなると歩くだけ、立っているだけでももれるようになります。
このタイプは女性の尿失禁の半数以上を占めるとされています。原因はインテグラル理論によると骨盤底のゆるみ、特に前方領域のゆるみであるとされています。

尿もれ防止のメカニズム

インテグラル理論によると、腹圧がかかったときに女性の尿道は膀胱頸部(膀胱と尿道の移行部)ではなくて中部尿道(尿道の真ん中あたり)で閉鎖して尿もれしない仕組みになっています。そのためには恥骨尿道靱帯、尿道に接している前腟壁、恥骨尾骨筋、尿道周囲の結合組織などの統合作用が重要であるとされています。すなはち、骨盤底の筋肉や靱帯のバランスのよい緊張が急な腹圧の変化にも対応して尿道を閉鎖して尿もれを防止できるのです。

腹圧性尿失禁の原因
腹圧性尿失禁には2つのタイプがあることが分かっています。
尿道過可動
一つは尿道過可動タイプで、骨盤底の緩み、特にその前方領域の緩みが原因で、インテグラル理論による中部尿道の閉鎖がうまくいかないタイプです。名古屋第一赤十字病院の加藤久美子先生はこれを「ぐらぐら尿道」と名づけました。
骨盤底が緩む最大の原因は妊娠と出産です。妊娠から出産にいたる期間、骨盤底は、上昇した腹圧による圧迫を受け続けます。そして出産により、骨盤底の組織はむりやり引き伸ばされ、断裂することも珍しくありません。
妊娠中や出産直後には多くの女性が尿もれを経験します。通常は数週間で引き伸ばされた組織はもとに戻り、尿もれは止まります。
しかし、産後の骨盤底の緩んだ時期に無理に腹圧をかけたりすると、修復がうまくいかず、更年期前後に尿失禁や骨盤臓器脱が生じる原因になると考えられます。肥満や排便時にいきむなどの骨盤底に圧力をかける生活習慣もまた骨盤底を傷めつけ、腹圧性尿失禁の誘因となります。
骨盤底の組織の弾力性の維持には女性ホルモンであるエストロジェンが必要です。実際、この女性ホルモンが減少する更年期に腹圧性尿失禁の発症の一つのピークがあります。
また高齢になると加齢にともなう筋力が弱まりの一環として、骨盤底の筋力も弱くなり腹圧性尿失禁の原因となります。

Posted by 2011/05/24

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