女性泌尿器科(ウロギネコロジー)外来へ行こう
●女性の尿失禁
5.OABSSとは
質問 | 症状 | 点数 | 頻度 |
---|---|---|---|
1 | 朝起きたときから寝るときまでに何回くらい尿をしましたか | 0 | 7回以下 |
1 | 8~14回 | ||
2 | 15回以上 | ||
2 | 夜寝てから朝起きるまで、何回くらい尿をするためにおきましたか | 0 | 0回 |
1 | 1回 | ||
2 | 2回 | ||
3 | 3回 | ||
3 | 急に尿がしたくなり、がまんがむずかしいことがありましたか | 0 | なし |
1 | 週に1回 より少ない |
||
2 | 週に1回以上 | ||
3 | 1日1回くらい | ||
4 | 1日2~4回 | ||
5 | 1日5回以上 | ||
4 | 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか | 0 | なし |
1 | 週に1回 より少ない |
||
2 | 週に1回以上 | ||
3 | 1日1回くらい | ||
4 | 1日2~4回 | ||
5 | 1日5回以上 |
過活動膀胱の診断には、上記の質問項目の3で、2点以上、かつ、全体で3点以上が対象となります。症状の重症度評価では、合計スコアが5点以下を軽症、6~11点を中等症、12点以上が重症とされます。
過活動膀胱は、尿意切迫感(急におこる強い尿意で、トイレを我慢しがたい感じ)を主な症状とし、頻尿(通常は夜間頻尿)、場合によっては切迫性尿失禁を伴う症状症候群です。
診断には特殊な検査は必要なく、おもに自覚症状に基づいて(OABSSなどの質問表を用いて)診断されます。
日本人の約8人に1人、約800万人にのぼると推定され、高齢化社会にはいり患者数は増加すると予想されています。
6.尿失禁の治療
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1)腹圧性尿失禁の治療
・骨盤底のハンモックを修復することが基本になります。
・骨盤底筋体操は正しく行えば3か月くらいで効果があります。
・理学療法として、外来でのウロマスター、PBトレーナーも効果があります。
・薬物療法としてはβ-交感神経刺激剤であるスピロペントがありますが、長期に連用する場合には副作用に注意する必要があります。
・手術としては、メッシュテープを挿入し中部尿道を軽く支えるTVT手術やTOT手術が低侵襲で効果が優れているのでゴールドスタンダードとなっています。 -
2)切迫性尿失禁の治療
・抗コリン薬による薬物療法が第一選択となります。
・これに緩んだ骨盤底を再建することを目的とした骨盤底筋体操、ウロマスター、PBトレーナーなどの理学療法、排尿を我慢する習慣をつけることによる機能的膀胱容量の増加をめざした膀胱訓練などの行動療法など加わり治療の骨子となります。
・内服治療の副作用としては口が渇く症状や便秘が出ることがあります。また緑内障治療中の方は、抗コリン剤の服用には注意が必要です。 -
3)混合型尿失禁の治療
・まず抗コリン薬により切迫性の部分を治療します。
・後に腹圧性の要素が残れば、その治療を追加します。
・抗コリン薬により尿失禁が消失する場合も少なくありません。
7.尿失禁の手術:TVT手術・TOT手術
T腹圧性尿失禁に対しては手術療法の適応があります。
1世紀以上にわたり100種類以上の手術法が報告されてきましたが、現在世界的にもっとも実施されているのがTVTスリング手術です。
TVTはtension-free vaginal tapeの略で前膣壁の尿道の中間部分に相当する前膣壁を小
切開してここから恥骨の裏側を経由して下腹部にポリプロピレンのテープを通し、咳等で腹圧がかかったときに尿道をしっかりと支持することで尿道の機能的な閉鎖→尿漏れを防ぐという手術法です。
TVT手術では術中に膀胱へ傷がついていないかを内視鏡(膀胱鏡)で確認する作業が必要であること、テープ引き上げの調節が微妙であることから、最近TOT手術が試みられています、TOT手術では、骨盤臓器脱のメッシュ手術と同様に、閉鎖孔に尿道をささえるテープを通しますので内視鏡操作が不要で術後の排尿困難のリスクもすくない利点があります。TVT、TOTいずれも治療効果にすぐれた方法です。私は、基本的にはTOT手術を、また症例に応じてTVT手術を実施しています。ただし、TVT手術は、膀胱・腹膜の損傷を避けるため、膣からの穿刺ではなく、腹部から穿刺を行うTVT-abdという方法で手術を行っています。