尿失禁・骨盤臓器脱などの女性骨盤底疾患を主な対象とした女性のためのサイトです。

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●骨盤臓器脱
1.骨盤臓器脱とは?

女性の骨盤内にある膀胱、子宮、膣、直腸などが本来の位置から下垂して膣から脱出してくる疾患です。脱出している臓器・部位により膀胱瘤、子宮脱、小腸瘤、直腸瘤、などと呼ばれますが、骨盤臓器脱はそれらの総称です。
以前は性器脱、あるいは単に子宮脱といわれましたが、最近海外の論文などではこの病態に対してpelvic organ prolapse ; POPとの名称が用いられる機会が多くなり、日本でもpelvic organ prolapseの日本語訳として骨盤臓器脱という名称が用いられるようになりました。

2.骨盤臓器脱の種類

膣から脱出してくる部分や臓器により尿道瘤、膀胱瘤、子宮脱、小腸瘤、直腸瘤などと呼ばれます。

骨盤臓器脱
3.骨盤臓器脱の原因

ヒトが直立して歩行しはじめた為に、内臓の重みを含めた強い圧力が絶えず下方の骨盤に向かうこととなりました。この持続的な圧力は骨盤の骨でいったん受け止められ、さらに骨盤の一番低い部分(骨盤底)に集中して圧力がかかります。この圧力を支えるために女性の骨盤内は、子宮を中心にして靭帯(線維成分の多い強靭な組織)があたかも家屋の梁の構造のように縦横にはりめぐらされています。靭帯に加えて、肛門挙筋とその他の骨盤底の筋群やそれらを被覆する内骨盤筋膜(骨盤底全体に広くしかれた繊維性のシート状構造)が骨盤底を支持しています。

ところが、ヒトは出産のときに、骨盤の大きさと比較すると過大に発育した赤ちゃんを分娩します。その結果として、産道となった子宮の下部、膣、骨盤底の諸靭帯や骨盤底筋が少なからず傷つくこととなります。この傷は産褥期(分娩後1~2ヶ月)にほぼ完全/不完全に癒えてゆきますが、その後年数を経て閉経を迎えると、女性ホルモンの減少も影響して諸靭帯・骨盤底筋の支持力が低下して骨盤臓器脱が発生すると考えられます。分娩の回数が増えるにしたがい、骨盤臓器脱のリスクは増えるとされ、陣痛が始まる前に帝王切開した婦人よりも、経膣分娩をした婦人に骨盤臓器脱が多いとする報告があります。

加齢にくわえて、高度な肥満、慢性の便秘や、慢性の咳をともなう呼吸器疾患などは骨盤底に加わる腹圧負荷を増強することから骨盤臓器脱発症のリスクを高める要因とされます。近い血縁、母あるいは姉妹に骨盤臓器脱があればそのリスクがたかまるとする報告もあります。

4.骨盤臓器脱の頻度

わが国での骨盤臓器脱の罹患についての統計データはありませんが、欧米の研究によれば、経膣分娩を経験した女性の約3割程度に骨盤臓器脱が見られるといわれます。

Olsenの報告(1997)によると 米国女性の生涯罹患率(80歳になるまでに骨盤臓器脱または尿失禁に対する手術療法を受ける)は11.1%がとされています。最近でも同様の罹患率を示す報告があります。スウェーデンのSamuelssonは出産を経験した女性の44%に骨盤臓器脱がみられたと報告しています。しかし診察を受けていない女性もそのほかに多数いるだろうと推定されています。
骨盤臓器脱の症状で困っていても、恥ずかしさから医療施設を受診できずに悩んでいるのは日本でも、海外も事情は同じようです。

仮に日本の40歳以上の女性人口の10%が骨盤臓器脱に罹患しているとすれば国内の患者数は約350万人となります。私が勤めていた病院の女性泌尿器科ウロギネセンターには、この1年間で少なくとも500人の骨盤臓器脱の新規患者が受診していることを考えあわせると非常にありふれた病気であることが類推されます。

骨盤臓器脱を多い順に並べると、膀胱瘤>直腸瘤>子宮脱 となります。

5.骨盤臓器脱の症状
6.膀胱瘤
7.直腸瘤
8.子宮脱
9.子宮摘出後の膣断端脱
10.骨盤臓器脱の診断・評価
11.骨盤臓器脱の治療
12.骨盤底筋体操
13.フェミクッション
14.リングペッサリー
15.骨盤臓器脱の手術(従来方法)
16.骨盤臓器脱の手術:TVM法

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