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女性泌尿器科(ウロギネコロジー)外来へ行こう

●膀胱炎

女性の約半数の方が一生に一度は罹患したことがある病気が膀胱炎です。男性では20cm以上ある尿道が、女性ではわずか4cmしかなく、尿道を経由して膀胱に細菌が侵入しやすいために、女性での罹患率が高くなるとされています。
ここでは多くの女性がかかったことのある急性単純性膀胱炎と、最近多くの患者さんがいることがわかってきた間質性膀胱炎についてお話します。

Ⅰ.急性単純性膀胱炎
【原因】

1) 細菌が尿道を経由して膀胱に入る、②膀胱内で増殖して炎症の原因となることにより、発症します。原因菌はほとんどの場合大腸菌です。しかし、細菌が膀胱内に侵入すれば必ず膀胱炎になるわけではありません。膀胱の粘膜には、細菌を殺す機構が備わっており、体調が良ければ、膀胱炎を発症することは稀です。体の免疫機構が弱った状態、例えば感冒などのウイルス疾患にかかっているときや月経中、過労や睡眠不足の時などに細菌が侵入してくると発症しやすくなります。どんなときに細菌が侵入するかと言えば、オーラルセックスを含めた性交渉、月経中などで陰部が不潔になりやすい時などが考えられます。

【予防】

膀胱炎にならないためには、体調のすぐれない時には性交渉は控える、月経中には無理をしないなどの注意が重要です。一般には排尿を我慢すると膀胱炎になると考えられていますが、排尿を我慢することで膀胱に細菌が侵入することはなく、膀胱炎には罹患しません。むしろ初発尿意(約100-150cc)での排尿を繰り返すと機能的膀胱容量が減少し、頻尿となります。逆に頻尿や過活動膀胱と呼ばれる病気の治療には排尿を我慢する習慣をつける膀胱訓練という行動療法を行っています。排尿はすこし我慢する習慣をつけた方が良いのです。

【治療】

抗生物質による治療が有効です。最近の抗生物質は強力なので特殊な耐性菌を除けば2,3日の服用で細菌は消失します。一般には膀胱炎になれば水分を多くとることが推奨されていますが、水分を多めにとるのは3日間で十分です。細菌がいなくなった後は、むしろ排尿回数が少ない方が膀胱の粘膜の再生や再感染の予防には良いのです。

【繰り返す単純性膀胱炎】

このような膀胱炎を繰り返す患者さんの中には、外尿道口が膣に非常に近い構造を持った方がおられ、このような方が性交渉をすると外尿道口が膣の中にまくれ込み、細菌が非常に侵入しやすい形になっていることがあります。簡単な手術で治療することが出来ますので専門医に相談すると良いでしょう。

Ⅱ.間質性膀胱炎

最近、予想以上に患者数が多いことがわかってきた慢性進行性の膀胱炎です。病気の存在を知らない場合、決して診断することが できない疾患なので是非記憶の片隅にとどめておいてください。

【症状】

典型的な症状は尿が貯留したときの膀胱痛ですが、尿貯留時以外の痛み、それも尿道痛、会陰部痛、下腹部痛などを訴える場合もあります。軽症の方では、頻尿や尿意亢進などで受診される方も多く、単純性膀胱炎、過活動膀胱等と症状が似ています。

【検査所見】

尿所見では異常が認められないことが多く、泌尿器科に受診しても「膀胱炎ではありません」「異常ありません」などと言われ、医療機関を転々とする患者さんや、精神科に紹介されてしまう患者さんもおられます。

【診断】

麻酔をかけた状態で膀胱鏡で膀胱内を観察しながら膀胱に80cm水柱で水を注入し膀胱を拡張します。その後水を排出してゆく過程で膀胱粘膜から出血してくることを確認することで診断がつきます。この膀胱水圧拡張が同時にこの病気の初期治療になります。

膀胱内 これも間質性膀胱炎の膀胱鏡所見です。外来で行う膀胱鏡検査所見ではまず異常とは診断されなません。しかし、良く観察すれば、コイル状の新生血管の増生を見つけることができ、間質性膀胱炎と診断できます。
膀胱内 さらに生食を注入し、膀胱を拡張すると、平滑筋バンドが出現し、血管の血行を遮断するところが見られます。伸展痛の一部はこの血行遮断によるものと考えられています。外来での膀胱鏡検査では、この時点で痛みにより検査の続行が不可能になります。
膀胱内 麻酔下に、手術室で行う膀胱鏡検査(水圧拡張術)の所見です。膀胱に80cm H2Oの圧で水を注入していき、充満した時点で(ほとんどの場合、滴下が止まるか、膀胱鏡周囲から水が漏れます)今度は少しずつ水を抜いていきます。すると、先ほどの血行が再開通してその血管の遠位端から徐々に出血が始まります。
膀胱内 これがGlomerulation(点状出血)です。間質性膀胱炎の典型像です。

〈参照:京都市立病院HP〉

【原因】

詳細は不明ですが、想定されているメカニズムとしては膀胱の粘膜を透過して炎症が膀胱粘膜の間質に及びアレルギー反応を起こし、そこでおこった炎症が局所に留まり遷延するといったことが考えられています。

【臨床経過】

炎症が遷延し消長を繰り返しながら次第に悪化してゆく経過をたどり、膀胱は萎縮していきます。20歳台で発症し、最初は頻尿程度の症状であったものが、消長を繰り返し40ー50歳で典型的な膀胱痛をきたし、医療機関を訪れることとなります。

【治療】

第一選択;麻酔下膀胱水圧拡張(同時に診断が可能)
・薬物療法;国内では保険診療で認められた薬はありません
抗アレルギー剤であるトシル酸スプラタンスト
各種漢方薬、消炎鎮痛剤、抗不安薬など
膀胱内注入療法:ヘパリン、DMSOなど
・生活上の注意
食事内容に注意することにより症状の軽快が得られることがあります。

【その他】

間質性膀胱炎と同じ症状を来すものとして膀胱上皮内癌があります(約1%の頻度)ので注意が必要です。水圧拡張時に病理組織検査をして必ずチェックすることが重要です。

頻尿を訴えて受診される患者さんで抗コリン薬の無効な方の半数近くは間質性膀胱炎の可能性があります。

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