トピックスブログ
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)ノート(5)
LSCの術前検査
骨盤内のMRI検査: 膀胱、子宮、直腸などの位置、腫瘍性病変がないことの確認とメッシュ脚を固定する予定の岬角の前面に異常な動脈や静脈などが存在して邪魔していないかどうかをチェックします。子宮筋腫があれば大きさやその位置により手術の難易度が増すので、術前に情報を得ておきます。
膀胱機能検査(ウロダイナミック検査):術後に排尿困難や尿失禁などが起こる可能性をチェックしておきます。
大腸内視鏡検査: 大腸に癌があるとLSCは禁忌となるので、この検査は必要です。
眼圧測定: 手術中に眼圧が上がって、失明するようなことがあってはいけないのでチェックしておきます。
全身麻酔下で長時間、気腹(お腹の中に炭酸ガスを還流させて膨らませて)下に行いますから、心電図異常、呼吸機能異常、深部静脈血栓のないことなどを確認しておきます。
Posted by 2016/09/29
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)ノート(4)
LSC手術のメリットとデメリット
LSC手術のメリットとデメリットをTVM手術と比較してみました。
これにより、患者さんがどちらの手術を選択すればよいのかの参考になります。
それぞれの項目は執刀する術者の技量によりますので参考の資料としてください。
LSCのメリットはTVMに比較して性交痛の出現が少ないことで、まだ性交渉のある方には薦められます
メッシュを膣壁や肛門挙筋にしっかりと縫合固定するので、TVMに比較して術直後のメッシュのズレをきたしにくいと考えられ、退院後すぐに普通に生活でき職場復帰も早期から可能です。
LSCでは手術時間が長いので超高齢の方には不向きだと思われますが術者の技量によります。
手術時間:私の場合(LSCの執刀250例、TVMの執刀4000例)は下記のようになります。
LSC: ダブルメッシュで子宮膣上半切除の場合2時間ー2時間30分
TVM: TVMA2 30分、 TVMC4 1時間、 TVMA2P 1時間10分
LSCでは高度の肥満の方の手術は難しい: LSCでは腸を上腹部に移動させて、手術の術野を確保するのですが、肥満の方では腸間膜の脂肪が分厚いと腸を移動させるのが困難になるのです。またメッシュの脚を固定する岬角前面の脂肪が分厚くて血管や神経、靭帯を同定するのが難しくなるのです。
どのくらいの肥満までOKかはやはり術者の経験と技量に依存することになります。
LSCでは術中に頭を低くして手術を行うため、眼圧が上昇し、脳内の血管の圧も上昇するので、眼圧が高い方(緑内障など)や脳動脈瘤など脳血管に異常のある方は禁忌としています。
Posted by 2016/09/28
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)ノート(3)
フランス式LSCとアメリカ(US)式LSCの違い
同じLSCにも多くの術者が多くの方法で手術を行っています。
LSC術式には大きく分けてフランス式とアメリカ式の二つの方法があります。
その主な相違点を図に示しました。私がIRCAD(フランス)で学び、現在改良中の和製LSCのルーツはフランス式であり、ほとんどすべての骨盤臓器脱に応用できる術式です。
言い換えると前膣メッシュと後膣メッシュの2枚のメッシュを用いた、total repair としてのLSCです。
Posted by 2016/09/26
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)ノート(2)
LSCの歴史
開腹によるメッシュを用いた仙骨膣固定術(Abdominal sacrocolpopexy:ASC)は1957年に Huguierらにより初めて行われ、間もなく子宮摘除後の膣断端脱治療のゴールドスタンダードとなりました。
1991年にフランスのWattiez らがLSCを行ったと述べ、1995年に報告されました。最初の報告は1994年アメリカのNazhatによるもので、やはり子宮摘除後の症例でした。Wattiezらは前膣壁の剥離を膀胱頸部付近まで行い、後膣メッシュを左右の肛門挙筋に縫合固定していて、膣尖部にのみ固定するアメリカ式とは最初から異なったコンセプトであったようです。
Posted by 2016/09/25
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)の進化について
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)の私個人としての執刀数が239例となりました。
糸を用いるメッシュの縫合固定(アンカリングと言います)箇所はメッシュの美しい展開と再発予防のために次第に増加し14箇所となりました(それだけ縫合に時間がかかる)。
最近では、さらにメッシュの後腹膜化(メッシュが腹腔内に出ないように埋め込むこと)の方法が簡便な一括巾着縫合から、少々複雑ではあるがより繊細な、後膣メッシュをまず覆うようにダグラス窩を閉じる方法(名鉄病院の成島Drから学んだ)へと進化しました。
手術時間は120〜150分とかなり短縮しましたが、手間のかかる手技がどんどんと追加されるので、これ以上は短縮できそうにはありません。
腹腔鏡下手術は一人でできるものではなく、助手とのチームワークがうまくとれて初めてスムーズによい手術ができる、そういう術式なので、助手の力量で手術の質も時間も変わってきます。
第一東和会病院では、私が執刀する手術には鍬田Drか加藤Drが助手を務めてくださいますが、二人とも独立した術者としても多数のLSCをこなしており、助手としての技量も大したものです。
私がストラスブール(フランス)のトレーニングセンターであるIRCADに学んでほぼ1年になりますが、その術式を基礎としてより洗練された術式(和式LSC)を作り上げてきました。
まだまだ一例一例に気付きの連続で経験値が上がるのを実感しています。
今開発中のメッシュ後腹膜化の方式が定まったら、和式LSCも精度の一段高い術式として、中長期の成績の蓄積に入ります。
もう一点、おこがましいかもしれませんが、このLSCを本気で学びたい術者の方、半年でも一年でも研修に来ていただきたいと思っています。
ダグラス窩を閉鎖したところのフォトを添付します(患者さんの了解済み)。
Posted by 2016/09/23
ひまわり会の勉強会 減量のストラテジー
今日はひまわり会の勉強会、最初の講師は半年で10kg以上減量された患者さん、職業は管理栄養士始め3つの仕事をこなすスーパーウーマン。減量の秘訣を含めて生き方のヒントを教えていただきました。二番目の講演はやはり管理栄養士の村田先生に肝臓の話をしていただきました。
減量のためには、何がなんでも痩せるという強い意志を持つこととと、いつまでにどれだけ痩せるかというマイルストーンを途中に設定して、そのための摂取カロリーを計算し、食べて痩せることが大切だそうです。
減量して無事手術も成功裏に終わった後も、その体重をキープしておられ、辛かった膝の痛みも なく体も軽くなり良いことずくめですと語っておられました。
Posted by 2016/09/10
今日は『骨盤臓器脱を克服した記念日』
ご存知の方は少ないでしょうが今日は「骨盤臓器脱を克服した記念日」、これはひまわり会から申請し日本記念日協会に認定された記念日です。
この記念日を中心に毎年、「骨盤臓器脱全国無料相談キャンペーン」が、ひまわり会と女性の排尿障害を考える会の共催で開催されています。
今回のキャンペーンで、ひまわり会には月ー木の4日間で77件の相談が寄せられ、2台の携帯電話がフル稼働だったようです。ひまわり会の皆様、お疲れ様でした。
私がウロギネコロジーセンター長を務めている第一東和会病院もこの電話相談に参加して、月ー金の5日間で75件の相談に対応しました。
資料をお送りする方、受診される方なども少なくなく、相談された方々の治療に向かってのモチベーションの一助になったとすれば幸いです。
今回は全国で多くの新聞記者の方に告知記事を書いていただけたおかげで、キャンペーンが盛り上がりました。この場をお借りして記者の方々にお礼を申し上げます。
また電話相談の機会を逃してしまったお困りの方々にーー 毎週水、木、金曜日、専門医による電話相談をお受けしていますので第一東和会病院にお電話くださいーー
Posted by 2016/09/09
ピロリ菌がいなくなりました
8月16日に受けた胃癌術後の3年目の検診結果月郵送されてきました。数カ所生検した組織は胃炎ということで胃癌の再発はなかったのですが、それ以上に嬉しかったのは呼気分析による検査でピロリ菌が消失が証明されたことです。
胃癌の95%以上の原因はピロリ菌だとされていて、私も胃癌が発生する数年前にピロリ菌陽性と分かり、一次除菌を試みて失敗、二次除菌にも失敗してピロリと共存して、2年目に胃癌が発生しました。
幸い私の胃癌はごく早期だったのでESDという内視鏡下に粘膜と筋層の一部を剥ぎ取る手術で治癒したのですが、ピロリが陽性だと再発の可能性が高いということで、悩みの種だったのですが、ピロリ消失の結果でスッキリしたところです。
食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎の指摘を受け、「だんだんと壊れていくものだなあ!」という思いと食生活の改善によりまだまだ健康でやれるという思いを持ちました。
日本人に多いピロリ菌と胃癌です。若い人にも是非ピロリ菌検査受けていただきたいと思います。
Posted by 2016/09/04
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)3年5ヶ月フォロー
私がLSCを開始して3年5か月が経過しました。初期症例では手術の精度がまだまだ低かったのか、時間の経過とともに前壁下垂の前方再発した症例が見られた。前壁メッシュの前方固定の精度と位置の重要さを痛感しました。
またトータルリペアというコンセプトが徹底しておらず、後壁下垂のない症例には前壁のみにメッシュを留置していたのが原因だったのか、後壁下垂が発生した症例があり、あらためてトータルリペアというコンセプトの重要さも身にしみました。
術後3年での再発率がどうかというところをこれから厳しくチェックしてLSCの立ち位置を検証する段階に入ったということで、他のエキスパートの術者とも情報を共有していい手術にしていかなければと、気を引き締めた次第。
私個人のLSC執刀数は約230例、手術時間は平均2時間30分となり、経験値も上がってきたが、再発例を経験すると、反省と失敗から学ぶ姿勢を保って、合併症やインシデントのない手術をますます積み重ねたいと強く思います。
Posted by 2016/08/16
第一回LSCビデオセミナー報告
月17日、18日の二日間、岐阜長良川温泉の旅館で骨盤臓器脱手術学会主催の第一回LSCビデオセミナーが開催された。
Posted by 2016/08/03