トピックスブログ
「女性泌尿器科へ行こう!」改訂版が出せるかもしれません
Posted by 2016/07/13
LSC(腹腔鏡下仙骨膣固定術)執刀数、ついに200例を超えました
先週北九州で日本女性骨盤底医学会が開催されました。
目立ったのは腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)に関する演題が多かったこと。。
私もIRCAD研修を経て進化した和製 total repair double mesh LSCについて発表しました。
学会の前日に私個人の執刀数が200例となり、術式もほぼ定まったので、今後はこの手術の中長期の成績を評価していくことになります。
TVM手術を改良していたころにはメッシュ手術の要点は美しいメッシュの展開とそのための的確なアンカリングに尽きると考えて来ましたが、LSCも同じだと思います。
後膣メッシュのアンカリングポイントは左右の恥骨直腸筋と子宮頸部、前膣メッシュのアンカリングポイントは膀胱頸部側の膣壁と子宮頸部、前後メッシュを統合し仙骨前面の前縦靱帯にアンカリングします。合計最低12ポイントの縫合を必要とするので、そのための十分な剥離と縫合には手間がかかりますが、手抜きしてはいけません。
条件の良い症例では1時間台で終わることもありますが、石灰化した子宮筋腫を持つ症例などだと子宮取り出しに時間を要するので3時間を超えることもあり、平均2時間30分といったところで、私の実力では12ポイントLSCにこれ以上時間短縮は無理でしょう。
嬉しいことに、私の部下の二人の術者も3時間以内で12ポイントLSCを完遂できるまでになったので
チームとしての能力が非常に高いと思います。
今後は対象の範囲が広がって、そこそこの肥満であってもこの手術の適応とすることができるようになるのではないでしょうか。
今、私のTVMも2本脚のTVMA2となり非常にシンプルで良い術式になっていますが、完全子宮脱などには力不足であり、やはりオールマイティなのはLSCだと思う今日この頃です。
Posted by 2016/06/16
骨盤臓器脱全国無料電話相談キャンペーンのお知らせー第2報ー
6月20日からの週を中心に骨盤臓器脱全国無料電話相談キャンペーンを開催します。
潜在患者さんの多いこの病気に悩んでいる多くの方はこの機会にぜひご相談ください。
対応してくださるのは全国のエキスパートの医師達と看護師達です。
きっと良い解決策が見出せるかもしれません。
Posted by 2016/06/02
尿失禁2
こんにちは。
今日はかなり前に書いた尿失禁の話の続きを書こうと思います。
「知らぬ間に漏れる」ということで気をつけなければいけない疾患の一つが「膀胱腟ろう」です。これは膀胱と腟の間に孔が空いて膀胱内の尿が腟からでてきてしまう疾患です。まれに腎臓でできた尿を膀胱に運ぶ尿管と腟の間に孔が空いてしまう「尿管腟ろう」という疾患もあります。どちらにしても腟は尿道のように閉めることができないので絶えず尿がでてきてしまいます。
発展途上国などでは分娩時の損傷が原因でおこることも多く、若い女性で悩んでおられる方も多いと聞きます。
日本では分娩でおこることはまずなく、子宮がんの手術や放射線療法を受けられた方、良性疾患で子宮摘出術の手術をされた方が多いです。
診断は腟から尿がでていることを確認をすることです。腟にたまっている液体が尿かどうかを見るためには膀胱内にインジゴカルミン(青色の色素)を入れてみて、腟から出てきたらおこっている場所も含め診断がつきます。
治療は小さければ尿道カテーテルを挿入し膀胱を膨らまさないようにしていてしばらく様子をみたり、アロンアルファ(医療用)を孔に注入し塞いだということもありますが、基本は手術になります。
内診して確認すればすぐに診断がつく病気なのですが、日本では数も少ないのですぐにこの疾患を疑うことはなく一般的な切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁の治療をあれこれ受けられていて最後に見つかったというケースも多いと思われます。
婦人科の手術を受けておられる方では注意したい疾患です。
本日はここまでです。
次回は他の疾患について書きたいと思います。
急に暑くなってきています。皆様 体調には十分気を付けてください。
加藤
Posted by 2016/05/19
アメリカ式LSCー子宮脱が主の骨盤臓器脱にー
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)の単一術者としての症例数は190症例を超えた。
昨年10月のIRCAD研修の後はtotal repairとしてのdouble mesh LSCを基本にして、1例1例症例を積み重ねてきたが、子宮脱が主のご高齢の方、あるいはTVMAP後の子宮脱の再発の症例には、Delancey のLevel 1 のみを修復する目的のアメリカ式LSCを行っているのでその印象を述べる。
フランス式LSCでは直腸と後膣壁との間を剥離し肛門挙筋にメッシュを固定、膀胱と前膣壁との間を剥離し、膀胱頸部側は外尿道口から2cmぐらいのところにメッシュを固定するのだが、アメリカ式では子宮頸部断端まわりの腹膜を剥離してにメッシュを固定する。
これまでわずか5−6例の経験に過ぎないが、症例を選べばなかなかいい術式である。術式の詳細については拙著「LSCテクニック」に名手、成島先生の術式が掲載(動画付き)されているので参照されたい。
ご高齢の方には手術時間が問題となるが、丁寧に施行しても1時間45分くらいで終了する。しかも仕上がりは非常に自然で、これから適応症例が増えるのではないか。
アメリカ式でもやはりdouble mesh がおすすめでバランス良い仕上がりになるようだ。
もう少し症例を増やして詳細をほうこくするが、子宮のみが下垂しているPOPやTVM術後の子宮脱再発には第一選択の手術ではないかと思っている。
Posted by 2016/05/15
第68回日本産科婦人科学会学術集会に参加して
ゴールデンウィークも今日で最終日ですが、皆さまいかがお過ごしですか?
天気には恵まれましたのでお出かけされた方、今されている方もいらっしゃると思います。
しかし暦通りだと今年の休みは飛び飛びで長期の休みにならなかった方もいらっしゃたんではないでしょうか。私たちも4月28,30日、5月2日と手術をしており、ゆっくり休んだという実感はありません。
さて4月の22日より竹山、鍬田は泌尿器科学会に行って来ましたが、私は産婦人科学会に参加しましたので報告させていただきます。
専門医機構の専門医制度は全科共通ですので、前回竹山が泌尿器科学会について書いていますように産婦人科学会でも専門医制度の変更に伴う単位獲得の必要性があり、参加者皆が聞きたい演題を聞きに行くというより単位のとれる演題をいかに効率よく回るかということに重きを置かれていたように思います。お陰で私もARTや遺伝性乳がん卵巣がん、マタニティーうつの話など今までなら聞きに行かないような話を聞くことができました。前向きに考えれば今の診療に直接役立つ話ではないですが、産婦人科医として知っていなければいけない話が聞けたのだと思います。ただこの制度もう少し考えてもらったほうがと思わずにはいられませんでした。
そんななかで今年の産婦人科学会で気になったことはロボット手術についてでした。
泌尿器科分野では随分前から行われており、前立腺がんでは保険適応もあるため現在半数ぐらいは行われていると聞きます。私は泌尿器科系の学会にもよく行くのでロボット手術についても話をよく聞いていましたし7-8年前は展示ブースで少し触らせてもらったこともありましたが、婦人科では今まで話されることはほとんどありませんでした。それが最近子宮頸がん手術で先進医療となったとのこと、アメリカではロボット手術の半分以上が婦人科領域の手術だということを考えると今後婦人科領域でのロボット手術の話は増えるのではと思われました。すぐには無理でしょうが、いずれ今私たちが行っているLSCという手術もロボットでする時代になるだろうと思います。骨盤臓器脱の手術方法も時代とともに変わっていくのでしょう。10年後、20年後どんな手術が主流になっているのかわかりませんが、今は今で最善の治療を行っていけたらと思います。
このようにいろいろ考えさせられた学会でした。
今日はこれで終わります。連休最終日皆さま楽しんだください。 加藤
Posted by 2016/05/05
日本泌尿器科学会総会のご報告
先週末から仙台で開催された第104回日本泌尿器学会総会に出席、フロンティア企画のシンポジウムで発表、ポスターセッションの座長を務めてきたので、印象などを報告します。
この4月から専門医制度が根本的に変わることになり、一言でいうと、専門医になるのも維持するのもこれまでの何倍もの労力を必要とすることになりました。5年間に取るべき単位すなわち、教育プログラムなどの受講の数が半端でなくなったわけです。
今回の学会でも、早朝から長蛇の列に並んで受講券をゲットしなければならず、教育プログラムは1200人収容のホールがいつも満席で1時間半狭い席で受講していると「そのうちエコノミークラス症候群に何人かはなるよ」と本気で心配になりました。
こうしてみんな専門医制度の奴隷になるのでしょうか。
専門医機構なんて必要だとは思っているのは誰?
フロンティア企画、シンポジウム「骨盤臓器脱手術を安全に行うために」で「LSCに学ぶ安全なTVM手術」と題して、TVMA2について講演しました。メッシュ手術の最重要点であるメッシュの展開とそのための正確なアンカリングについて強調しましたが、アンカリングという概念を持ってTVMを執刀しておられる術者には滅多にお会いできていません。
Elevateを推奨したシンポジストの先生、Elevateの本質は「閉鎖孔を穿刺しない」ということなのに平気で閉鎖孔経由の第一穿刺を採用していて意味不明でした。
座長の加藤久美子先生の名言「神は細部に宿る」を骨盤臓器脱手術を行うエキスパートを含むすべての術者に送りたいと思います。
Posted by 2016/05/01
第一東和会病院ウロギネコロジーセンター一周年
私たちのチームがウロギネコロジーの診療の場を高槻の第一東和会病院に移して一年が経過しました。
この1年間の手術数は460件とのことで、3名のDrで毎日外来もしながらよく頑張ったものだと思うとともにこれだけの数の手術枠を作っていただいた手術室のスタッフと3Dの内視鏡システムを優先的に使わせてくださった内視鏡外科センターの先生方に感謝です。
振り返ってみれば、移転したと同時にテレビで紹介していただいたり、毎日新聞、読売新聞に記事が載るなど、なかなか運の良い一年でした。
運は育てるもので、育てるためには努力が必要で。努力するためには目標と夢が必要です。夢は合言葉「アジアのウロギネセンター」。
主に骨盤臓器脱の術式の改良、特に腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)の術式について改良を重ねた一年でもありました。当院では一年間に108例のLSCを施行しましたが、全ての症例を問題なく完遂できたことは加藤、鍬田両医師の技術の飛躍的な向上によるところ大です。これからも頑張ってください。
私自身は札幌、旭川、鹿児島、白浜、松山などでの症例を含めると、この3年間で190例近くのLSCを執刀しましたが、昨年10月のストラスブール(フランス)IRCADでの研修以後、トータルリペアというコンセプトに忠実なLSCをより繊細な和製LSC術式として、確立したいと日夜努力しています。
そんなこんなで今年の2月には同じ考え方のエキスパートに分担執筆していただいた「IRCADに学ぶLSCテクニック」という教科書を刊行することができました。
また昨年11月に急逝された盟友、島田誠先生のあとを継いで、日本骨盤臓器脱手術学会の代表として、このマニアックな学会の舵取りをすることになり責任を感じるとともに、骨盤臓器脱手術に対する直接的な貢献ができることに楽しみも感じております。
昨日は私たちのチームを支えてくれている外来のスタッフ達と記念の焼肉パーティーを開きました。また来年、2周年パーティーを開けるようによろしくお願いします。
Posted by 2016/04/20
尿失禁1
春らしくなってきましたね。今日は寒かったですが、そとを歩いているとあちこちで桜が少し咲いていました。写真はダイビルです。
さて今日から数回に分けて尿失禁の話を書こうと思います。
皆様もご存知の通り尿失禁には大きく分けて2種類あります。くしゃみや咳などお腹に力が入った時に漏れる腹圧性尿失禁と急に行きたくなって間に合わなくて漏れる切迫性尿失禁です。
それはそうなんですが、外来をしていると尿失禁で来られる患者様がきちっとどちらかにわけられない症状で来られることも良くあります。特に多いのが知らぬ間に漏れるという主訴です。これらの方もよくよく話を聞けばどちらかであることも多いのですが、違った症例について次回から書いていきたいと思います。
暖かかったり寒かったりで体調を崩しがちな季節です。
皆様体調に気をつけて下さい。
加藤
Posted by 2016/03/26
第14回F-LUTS
先週末は東京で研究会でした。当科の医師3人で行ってきました。
この会は時間的には半日しかないのですが何時も他の学会では聞けない内容をその分野のエキスパートの先生が話されるので楽しみにしています。
今年は前半は行動療法について、日本大学泌尿器科の高橋悟先生や日本コンチネンス協会の西村かおる先生の話がありました。行動療法といえば骨盤底筋体操がすぐ思いつきますが、それだけではないことや指導するときの仕方など勉強しました。
後半には便失禁の治療の話もあり、色々勉強させていただきました。
とても有意義な時間でした。
加藤
Posted by 2016/03/14